仮想現実の世界から理想の女が現れた時
俺は2人分の入園料を払って、夢の国に入った。

混み合う夏休みの園内で、俺は暁里の手を握った。

暁里は一瞬、驚いたように足を止めたが、恥ずかしそうに目を伏せると、何事もなかったかのようにそのまま手を繋いで2人で歩いた。

家を出たのが遅かったので、ファストパスは取れなかったが、手を繋いで園内を歩いているだけでも、幸せだった。


俺たちは、くまさんのアトラクションの前でポップコーンを買った。

蜂蜜味のポップコーンは、幸せの味がした。

俺たちは、そのままくまさんのアトラクションに並ぶ。

110分待ち。

俺は、何気なくアトラクションの順路にある絵本を読んでいると、

「部長、英語分かるんですか?」

瀬名が驚いた顔をする。

「そんなに驚くことか?
これは児童書だから、元々、そんなに難しく
ないんだよ。」

高校生でも分かる英語だが、簡単に訳してみせると、暁里が素直に感動して褒めてくれるから、いささか単純だが、いい気分になる。

好きな女に尊敬されるって、こんなに気持ちがいいものなんだな。

くまさんのアトラクションは、とても楽しかった。

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