君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
 そんな甘さに酔いしれている間に仲間達からひとり思考が離れてしまっていることは今に始まったことではなかったから、俺が返事を返すのが遅れても、明弘も保もほんの少し呆れたように笑っただけで、俺を責めようとはしないのも、またいつもどおりの光景だった。


「な!景太、今日もマジでやばかったよな!
 俺、景太のラストのフレーズが終わった瞬間、鳥肌たったって、マジで」
 
 
 いつも明弘はテンションが高いけど、今日は特別に高いみたいだった。
 明日のライブに向けての興奮が収まらないんだろう。
 保はこれまたいつもどおり楽しそうな笑顔を浮かべていた。


「何てったて明日だからな!
 そりゃ気合も入るよ。
 明弘のドラムも保のベースもばっちりだったしな!」


「景太も良かったよ、本当に。
 景太の喉の調子もいいみたいだから、この調子で明日もいこうな。
 夜更かしすんなよ?」



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