約束のエンゲージリング
こんなに背伸びして大人っぽい格好をしても、やっぱりは彼からしたら私は幼い妹でしかない。
でもそれも仕方ないのかもしれない。
私だって孝兄を恋愛対象として見れるかと聞かれたらそれは〝NO〟だ。
親子ほど離れた年齢差。
私が生まれた時から今までずっと私の成長を見守ってきてくれた彼。
だからどんなに背伸びをしても彼の私に向ける感情は変わらない。
〝可愛い妹〟を見守る〝優しい兄〟
少しでもこのデートでそれを払拭できたならと淡い期待を抱いていたがそれもまた夢だったようだ。
鏡に映る情けない顔をした自分の頬を叩く。
「よしっ、、!戻ろ。早くしないとマサさんが心配しちゃう。本当、、心配性だからな。」
ハンカチで手を拭いてトイレを出ると先程より更に暗くなっていた。
急がなければと駆け出そうとすると目の前に2人組の男性が立ち塞がった。
「綺麗なオネーサンっ!そんなに急いでどこ行くの?てか1人?俺らとディナーでもしない?ご馳走するよ。」
ニヤニヤと笑いながら声を掛けてくる男性に少し恐怖を感じて後ろにだじろぐ。