約束のエンゲージリング
「い、いえ。1人ではないです。なのでディナーも結構です。人を待たせているので失礼します。」
そう言って足早に男性の横を通りすぎようとすると急に掴まれる腕。
「ねね、そんなつれないこと言わないでさ?俺らと楽しいことしょうよ。」
「そうそう。抵抗せずについてくるなら手荒な事はしないよ?美味しいものも食べさせてあげるしその後は、、たっぷり可愛がってあげるから。」
「っ、、、っ、、!」
恐怖で声が出ない。
情けない事に何も抵抗出来ずに、凄い力で彼が待つ場所とは逆方向へと連れて行かれる。
このままじゃヤバイと感じているが、力が入らない身体。
頬に流れる恐怖の涙。
その涙が地面に落ちる瞬間、掴まれていた手よりも更に強い力でグイッと身体が逆方向に浮いた。
「っ、、?!」
そして包まれる暖かい温もりと私のよく知る匂い。
走って探しに来てくれたのか抱きしめられた彼の胸の中で聞こえた鼓動は早く、少し息も切れているようだ。
そして彼は少し呼吸を整えてから唸るように呟いた。
『俺の大事な子を何処に連れて行こうとしてるのかな。これは完全に誘拐だね?』