約束のエンゲージリング
それはもう、彼をよく知ってる私でさえ初めて聞いた震え上がってしまうほどの低い声。
口調はいつもどおりなだけに、逆に怖い。
抱きしめられている為、表情は分からないが張り詰めた空気の中で彼からは凄まじほどの怒りを感じる。
「っ、、誘拐!?じょ、冗談じゃねーよ!おい、もう行こうぜっ、、!」
男性2人組もそのピリついた空気を感じ取ったらしく声を裏返しながらその場から逃げるように駆け出していった。
パタパタと遠ざかっていく足音が聞こえ私達以外の気配がなくなってもキツく抱きしめられたまま。
むしろ更に強まる腕。
暫くの間無言で何もいってくれない彼。
間違いなく言えることは彼らだけに怒っている訳じゃないという事。
だからそんな彼に小さな声で謝罪する。
「、、マサさん。心配かけてごめんなさい。本当にごめんなさい、、、。」
申し訳なさで声が徐々に小さくなってしまったがちゃんと彼の耳には届いていたみたいで一度大きくため息をついた。
『、、本気で心配した。1人で行かせた事、本当に後悔して何かあったらと思ったら、、本当に、、、。』
怒っている筈の彼の声が泣いているよう聞こえて、思わず抱きしめ返した。
「ごめんなさい、、マサさんっ、、!心配かけて本当にごめんなさい!」