約束のエンゲージリング


すると店内の奥にある客間から音が聞こえて、突然休憩所のドアが突然開いた。







『っ千佳っ、、、、!!』

「わっ!?」






現れたのは勿論、ここのオーナーである彼だったがその勢いに驚いてしまう。



よく見れば焦ったような表情を浮かべ肩で息をする彼の姿にギョッとする。

目の下にはクマがくっきりとできていて、髪もボサボサ。

それは昨日一睡もできていないのが分かってしまう程で、どんな時だって大人でスマートな彼のこんな姿を見るのは初めてでそれだけ彼を苦しめてしまったのだと思い知らされた。




あんな事があったから私がここに来ないとでも思ったのかロッカーの物音で血相を変えて私を確認したようだった。

その証拠に私の姿を捉えるとホッとした表情を浮かべる彼。




その姿に胸が締め付けられる。




これ以上、彼を傷つけないようにと昨日何度も練習をしておいた呼び方で彼を呼ぶ。








「おはよう、マサ兄!見てっ!エプロン早速着けてみたよ。なかなか似合うでしょ?それにほらピアスも着けて来ちゃった。本物のダイヤなんて初めて付けるから心なしか耳が重いけど背筋が伸びるね!!これが大人になったって事かなぁ〜〜。」



笑顔でくるりと回ってエプロンと耳のピアスを彼に見せる。





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