片想い同盟
違う意味でドキッとして、とっさに一歩後ろに下がる。
「おい杏、クラス集合かかったぞ」
「あ、うん、いま行く」
いいタイミングで拓海が声をかけてくれて、私は優希くんにもう一度お礼を告げてその場を離れた。
「よかったな、高野に会えて。見ててむず痒かったわ」
「……」
「杏?」
拓海に顔を覗き込まれて、ハッとする。
「え?」
「え?って、聞いてなかったのかよ」
くすりと笑う拓海はきっと、私が優希くんに会えてボーッとしてるとかそんなことだと思っているんだろう。
それもあながち間違ってはいない。とっさに掴まれた手は、まだ熱い。ドキドキしているのもたしか。