俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
「い、いえ……大丈夫です」
「ホントに?」
慣れた手つきで私の肩に触れ、もう一度確かめるように首を傾げる。さきほどよりも近くに顔を寄せられ、戸惑いと恥ずかしさで一歩引いてしまった。
「ええ、どこも痛くないですし、ケガもありませんので」
触れられた肩を意識してしまい、目も合わせられずに体温だけが上がっていく。
大丈夫って言っているのに離れてくれないなんて。この人、どうしたらいいんだろう。
「広瀬(ひろせ)さん! もう、仕事中に口説かないでください!」
困惑していると、一緒にした作業着の小柄な女性が男性の作業着の裾を引っ張って止めてくれた。
「ちょっと、こなっちゃん! どこをどう見たらそうなるの、口説いていないって。勝手に勘違いされたら困るんだけど」
小柄な女性のことを“こなっちゃん”と呼び、まるで“いつものやり取り”かのように軽く否定する。
「じゃ、なんですか。ワイセツですか?」
「人聞き悪いなぁ。ぶつかったから心配してんの」
このままここにいたら仕事もはじまってしまうし、この人たちも仕事にならないだろう。なにより、このノリのいい感じの会話についていける気がしない。
「あの、大丈夫ですから。それじゃ」
「えっ、ちょっと……ケガしてたら困るし、名前だけでもっ」
「いえ、結構です」
男性の顔は見ず、頭だけ下げて早歩きで事務所へ向かう。うしろから「ほら、やっぱり口説いてる」と女性に突っ込まれ「違うよ」と弁明しているのが聞こえてきた。
なんだったんだろう、あの人。
休憩時間の終わりも迫っていたし、さきほどの衝撃を忘れたい気持ちもあって早歩きで事務所へ戻っていると、愛海は名残惜しそうに男性のことを振り返った。