俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
「さっきの人、かっこよかったね」
「え? ああ……うん、テレビで歌って踊っていそうな人だったね」
アイドルばりだったという印象はあるけれど、もうどんな顔をしていたか覚えてもいない。ああいう、女性慣れしたタイプには泣かされた経験がある。近づかないに越したことはない。
「アイドルよりいいよ。すごく心配してくれてたし、優しかったよね。しかも作業着のマーク見た? 閂(かんぬき)建設だったよ。スーゼネ! ああいう人が飲み会に来ないかな」
閂建設は業界一の業績と規模で都心のアクセスが抜群にいいところに地上五十二階、地下二階建ての自社ビルをかまえ、レンガ調で重厚感がありながらもスマートに洗練されたフォルムはいつか観光名物になるんじゃないかと噂されている。
就職活動をしているとき、ここの経理も視野に入れていた。そのときは社員は全国に一万人以上だったはずだけど、いまはもしかしたらそれ以上かもしれない。
業界一という言葉にあぐらをかくことなく、いまも成長を続けているいい会社だ。……とはいえ。
「うーん、私はもうちょっと落ち着いた人がいいな」
さっきのやり取りやアイドルみたいな雰囲気から勝手に“チャラい人”という決めつけをしてしまう。
「えー、そう? あれくらい軽い感じの人のほうが、女性慣れしてて気遣いもできるだろうし、優しいんだよ」
得意気に笑う愛海の意見を理解しつつも、軽い人がいいという部分には同意は示せない。ただ、飲み会にいい人が来てくれないだろうかという部分は同じように期待している。
事務所へ戻ると、夜の飲み会を糧に午後からの仕事を頑張ることにした。