私は視えない。僕は話せない。
 しばらく。
 母の許可も僅かだが下り、以降少しずつ出会うようになった。
 ふた月置き。ひと月置き。二週間置き。

 今では、一週間置き程度。
 
 そんなある日は、姉が公園に行きたいと言い出した。
 母に許可を求めると、近くの○○公園ならいいわよ、と。
 
 そういって連れ出し、手を握ってゆっくりと歩くこと十数分。
 辿り着いたそこで、僕はいつものように姉の手を取った。

『今日の調子は?』

 答えはまぁまぁ。
 良くもなく悪くもない。つまりは、いつも通り問題はないということだ。
 それを聞いて、どこか安心している僕が居る。

 変わって、姉は僕に世界の様子はどうだ、と聞く。
 話せなくとも饒舌な僕に、少し前から尋ねるようになった言葉だ。

『いつもより人が多い。ごちゃっとしてる』

 視たままの風景を、僕は彼女の手に記していく。

 話している内、姉は母に申し訳なさを感じていることを告白してきた。母に迷惑をかけている自分が、自分で情けないのだと。
 それは僕も同じで、父に申し訳なさを感じている。
 普通の人なら出来て、僕が助けることも出来る筈の行動を、父が一人で全てやっているのだ。
 見ていて、あまり快いものではない。

『僕の悩みなんて小さなものだよ』

 そう言うと。

「悩みに大きい小さいはありませんよ? 同じ悩みでも、それぞれが思う大きさに姿を変えるんです」

 どこか、心が落ち着いた。
 その一言で、姉の心の強さが分かってしまった。
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