私は視えない。僕は話せない。
 彼女を引くのでは遅い。かといって、庇うにしても、あのスピードでは二人とも――

 迷った末。

―――ごめん――

 そう心の中で叫んで、

「ねぇ、拓也さん。あなたは――」

 何を言いかけていたのか。
 そんなものに構っている余裕なく、僕は姉の身体を突き飛ばした。

 衝撃で頭を――と認識するより早く、思考の速度を超え、僕は遥か上空へと打ち上げられた。
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