私の赤点恋愛~スパダリ部長は恋愛ベタでした~
てきぱきと仕事を捌く佑司の手は、ややもすれば四本くらいに見える。
それほどまでに忙しいのだ。
だって、普通は課長がやるような仕事までやっているから。

竹村課長の仕事は判を押す〝だけ〟だって有名だ。
いや、それだけをやっていてもらわないと困るのだ。

なにせ、彼がなにかするたびに被害が出る。
この間も交渉中の仕入れ先にポロッと、競合他社の納入予定価格を漏らしてくれた。
それでクビや降格にならないのは社長の隠し子だからって噂があるけど、真偽は定かじゃない。

でもそういう具合だからさすがに、部長には昇進できなかったんだろう。

そういうわけで、佑司の仕事は忙しい。
もしかしたら三十代で部長なんて破格の待遇の代わりに、やっかいごとを押しつけられたのかも。
そんなことを考えると、ちょっと可哀想になってきた。

十時になったのでキリもいいのもあって席を立つ。
給湯室の冷蔵庫を開けて、どれを食べようか悩んだ。
うちの会社は社員のおやつ用に、正規ラインにのせられなかった商品を冷蔵庫に入れておいてくれる。

「でもあんまり、お腹空いてないんだよねー」
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