闇に溺れた天使にキスを。
けれど私は何も言えないほど、たまらなく胸がドキドキしてしまう。
『ねぇ、白野さん』
「は、はい…!」
改まって私の名前を呼ぶ彼。
やっとの思いで返事をしたけれど、明らかに緊張しているのがバレただろう。
『会いたい』
隠すわけでも、遠回しに言うわけでもなく。
まっすぐに彼の意思を示される。
私だけじゃないのだと思うと、素直に嬉しかった。
彼も同じことを考えてくれているのだと。
「あの、私もね…神田くんの声を聞いたら会いたくなっちゃったよ」
今日の私はやけに恥ずかしいことを、平気で言ってしまう。
いつもなら恥ずかしくて言えないことだけれど、きっと面と向かって話していないからだろう。
『……そんなかわいいこと言って、俺を期待させる』
「えっ…」
『本当に会ってくれるの?』
電話越しに、彼がぼそっと何かを呟いた気がしたけれど、質問されたため聞き返すことができない。