闇に溺れた天使にキスを。
“君たち”とは、恐らく先輩たちのこと。
先輩のほうが年上だというのに、神田くんのほうが立場が上のようで。
宮橋先生の時と同じだ。
彼はいったい、何者なの?
「い、いや…あの、俺たちはただ…連れてきただけで」
しどろもどろになる足立先輩の声が聞こえてきた。
その声はどこか怯えている。
確かに怖かったけれど、先輩ふたりは悪くない。
というかむしろ、慰めようとしてくれた。
総長のところには連れていかれようとしたけれど───
「……っ、あ、あの」
完全に忘れていた。
私は今から、総長のところに連れて行かれるのだ。
今この地下にその総長がいるのならば、この状況は危険ではないのか。
ひとりなら怖くて逃げられないけれど。
神田くんとなら逃げられる気がして。
「白野さん?どうしたの?」
ネクタイをしていないだけでなく、メガネもかけていない神田くんが私のほうを向いた。
「今から、総長って人のところに連れていかれて…ここは危ない、から…早く、離れないと……」
とにかく簡単な部分だけを説明し、神田くんにここが危険だとわかってもらうと思ったけれど。