闇に溺れた天使にキスを。



「なんとも思ってねぇやつに、会いたいとか思わないだろ?」

「うん…」
「だから拓哉はお前のこと気に入ってんの」


本当にお気に入りなのだろうか。

ただ、私が彼の裏を知ってしまったからという可能性だってある。


「言っとくけど、お前の前だと本気で拓哉は変わるから。いい意味でだけどな」


私の前でだけ変わる…となれば、意地悪になるというくらいしか思いつかない。


「だって拓哉、普段は感情のない人間だから」


涼雅くんがあまりにもさらっと言うものだから、思わず聞き流しそうになったけれど。

一瞬、涼雅くんの言葉の意味が理解できなくて固まってしまう。


普段の神田くんは、感情がない?


その時に思い出した。
神田くんが本を読む意味を


「……感情の表現が苦手」
「は?」

「いや、あの…神田くんが感情の表現が苦手って言ってたなって」

「拓哉は表現が苦手どうこうより、感情をまったく抱かないんだよ」


つまり、神田くんは表現が苦手というわけではなく。
それ以前の問題だと言うの?

< 216 / 530 >

この作品をシェア

pagetop