闇に溺れた天使にキスを。



その背中に入れられてある和彫りを見て。


それは肩から背中いっぱいに堂々と入れてある黄色い虎と、和をイメージした色鮮やかな花が咲き誇っており。

思わず目を背けたくなるほど、痛々しくも見える。


「虎は肉体的な強さの象徴なんだって」


特にこれといって感情が込められていない声。
ただ、この刺青の意味を言っているようで。



「……痛くない、の?」

第一声がこれだった。
今の私には、それが精いっぱい。


「今は全然だけど、結構痛かったなぁ。
その頃にはもう戻りたくねぇ」


思い出すように話し、そして笑う涼雅くん。
笑い事ではない。

こんなの、痛いという言葉だけじゃ済まされないだろう。


「どうしてこんな…」


神田くんは背中に何も入れていなかった。
ただ、前に鳳凰の刺青がひとつ入れられていて。

刺青のデザインも違うけれど、それも関係あるのだろうか。

< 222 / 530 >

この作品をシェア

pagetop