闇に溺れた天使にキスを。



「拓哉は卒業してからこれ入れるんだってよ。
今はまともな高校生やってるから」


まるで私の疑問に答えるかのようにして、涼雅くんが口を開いた。


「この和彫りは、絶対入れないといけねぇから」
「じゃあ今日会った人たちの中でも、入れてる人がいるの?」


気になったから、聞いてみる。
これほどの和彫りを、他に入れている人がいるのかって。

すると───


涼雅くんが笑った。
ゾクッとするような、どこか怖いと感じる笑み。

本人は至って嬉しそうに笑っていたけれど、それが逆に怖いと感じてしまう。


「そういう質問、待ってた」
「え?」
「この和彫り、暴走族には何も関係ない」


はっきり関係ないと言い切った涼雅くん。

暴走族に関係ないのなら。
どうして神田くんと涼雅くんが和彫りを入れているのか。


深まる疑問。
けれどそれは、涼雅くんの思うツボだったようで。


「言っただろ?アソビでやってるわけじゃないって」
「うん、でもそれは暴走族を…」
「そんな軽いもんじゃねぇよ、この和彫りの意味は」


さっきから涼雅くんが何を言いたいのかわからなくて。
戸惑ってしまう私。

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