闇に溺れた天使にキスを。
「まあそうだけど、無理強いはされてねぇ。俺や拓哉の親からな。正直、嫌ならいつでも逃げられたけど、俺たちは逃げる事を選ばなかった」
「どうして?」
「そこで生きるべきだと思ったから」
理由はそれだけだと言うけれど、きっと覚悟とか勇気を相当要したはずだ。
「拓哉は俺と違って、生まれた時から後継者として期待されていたけどな。それでもあいつは重荷を感じず、若頭受け入れるなんてすげぇよ。
それこそまだ高校生なのに」
尊敬するような眼差し。
それは神田くんに向けてのもの。
高校生なのに、まだ成人していない子供だというのに。
神田くんや涼雅くんの生きる世界は、こんなにも暗くて重い───
「正直不安。拓哉、そういうところ鈍感だから、自分の気持ちにも疎いし。だからお前に頼みがある」
涼雅くんの瞳に私が映る。
「私、に…?」
「ああ。拓哉が壊れないように、そばにいてやってくれねぇか?」
彼の瞳はまっすぐで、揺らがない。
真剣な頼みなのだろう。
「で、でも私は何をすれば…」
「そんな気を張る必要はねぇよ。ただ拓哉のそばにいて、あいつが狂わないよう見てやってほしい。
俺たちなら止められねぇだろうが、お前ならそれができるかもしれねぇ」
神田くんが、狂わないように……まるで狂ってしまう可能性があるような言い方。
それとも本当にいつかそうなる日が来るかもしれないの?