闇に溺れた天使にキスを。



「おい、拗ねるなよ」
「……嫌い」


そっぽを向くようにして窓の外を見つめ、涼雅くんから視線を外す。


「ガキ」

「が、ガキでいいもんね…!
涼雅くんのほうがやってること子供だもん」


一度、涼雅くんのほうを見て軽く睨んでやる。
すると一瞬のうちにして涼雅くんが私から顔を背けた。

もしかして私の睨みが効いたのかなと思い、少し嬉しくなったけれど。


涼雅くんの耳が少し赤くなっていることに気づいた。


「涼雅、くん…?耳赤いけど大丈…」
「うるっせぇな、喋るな」

「むっ、そんなひどいこと言ったらダメだよ」
「だからいちいち反応がかわい……っ」

「涼雅くん?」
「あーっ、もううるせぇから黙れ!」


どんどん赤くなっていく涼雅くんの耳。

どうしたのだろうと不思議に思っていたら、運転手さんが小さく笑った。


「……雪夜(ゆきや)様は墓穴を掘ってしまったようですね」

「雪夜…?」
「涼雅様の苗字でございます」

「そうなんですね」


今初めて苗字を聞いたけれど。


「雪夜涼雅……って、すごくかっこいい名前だね」

素直な感想を口にする。
そんな私のほうを、やっと涼雅くんが見てくれたかと思えば。


「……っ、お前」


涼雅くんの顔が真っ赤に染まっていた。
その中で彼は睨んできたけれど、不思議と怖いと感じない。


「……ふふ、かわいい」

逆にかわいいと思ってしまう私って、どうなのだろうか。


かっこよくて怖いイメージが強かったのに、そう思ってしまうだなんて不思議だ。

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