闇に溺れた天使にキスを。
「ほんっとうに、白野さんはかわいい!
私が証明する!」
「これからも仲良くしてくれると嬉しいな」
「え、あの……私でよければ、ぜひ仲良くしてほしいです」
夢みたいだ。
ほんの些細なきっかけで、友達ができただなんて。
「3人だけずるい!
白野さん、私も入れて!」
「そんなの女子だけ白野さんに近づくとかずりぃよな?」
「男子はあっち行きなさいよ!」
すると、なんということだろう。
3人だけでなく、あっという間にクラスメイトに囲まれてしまう。
こんな状況が慣れなくて、混乱状態。
どうしようと思い、なかなか口を開けないでいたら───
「あの、ごめん。
少しどいてもらってもいい?」
騒がしい教室でもよく通る、低く冷たい声が聞こえてきて。
途端に教室内が静かになり、何故だか嫌な汗が背中を流れた気がした。
言い方は優しいものだったけれど、こんなにも怖いと思わせるほどの静かすぎる声音。
もともと開いていた教室のドアから入ってきたのは───
間違いなく神田くんだった。
ゆっくりと視線を神田くんに向けると、思わずゾクッと体が震えた。
光が宿っておらず、冷たい瞳をした彼がこちらを向いていたからだ。
思わず目が合ったけれど、慌てて逸らしてしまう。
みんなもそんな彼に圧倒され、誰もひと言も話さないままそそくさ自分の席へと戻っていく。
ただ、私だけはその場から動けなくて。
「白野さん。放課後、少し話をしようか」
誰にも聞こえないよう、耳元でそっと囁かれる。
穏やかな口調には見合わないほど、氷のように冷たい声で。
思わず体がビクッと震える。
どうして彼は怒っているのだろう。
その理由がわからなくて、泣きそうになる。