闇に溺れた天使にキスを。
あまりにもあっけなく電話が終わったため、呆然としてしまう私に対し神田くんがぎゅっと抱きしめる力を強める。
「……白野さんとまだ一緒にいられる」
嬉しそうな声が耳に届いてくすぐったい気持ちになった。
「私もだよ。
神田くんと一緒にいられて嬉しい」
「絶対俺のほうがその気持ち強いよ」
「そんなのわからないもん」
この3日間、どれだけ神田くんに会いたかったことか。
「うん、わからないけど自信はあるよ」
神田くんがそう言ったかと思うと、突然私から離れた。
「白野さん、お腹は空いてる?」
「お腹は…あまり空いてないかなぁ」
「じゃあまだゆっくりしよう」
神田くんのほうを向けば、嬉しそうに目を輝かせていて。
「何しようか。白野さんはいつも何してる?」
無邪気な表情。
神田くんはたまに幼い表紙をするから心臓に悪い。
「何って…神田くん、怪我してるんだから安静にしないと。寝るんだよ」
「嫌だよ、白野さんがいるのに寝るなんてもったいない」
私の言葉に対し、神田くんは真っ向から拒否してしまう。
「もったいなくないよ。まだ3日しか経ってないんだよ?絶対痛いでしょう?」
「痛くない」
「嘘つかないの」
「白野さんがそばにいたら痛さなんて忘れる。
これは本当だよ」
目を細めて笑う、その笑顔が眩しくてドキッと胸が高鳴った。
「そ、そんな調子のいいこと言ってもダメなものはダメです。寝なくてもいいから横になろう?」
「白野さんも?」
「わ、私は…あそこに座る」
指差したのは、涼雅くんが先ほどまで座っていた椅子だ。