闇に溺れた天使にキスを。



「今は忙しいの?」
「まあ、忙しいっていうかちょっと…」

「……?」


神田くんに言葉を濁され、ふと疑問に思ってしまう私。


「でも、うん…なんか隠すのは嫌だから白野さんにちゃんと言うよ」

「え……」


神田くんが改まったように言うから、少し緊張してしまう。

何を言われるのかなって。


「今日、華さんに会うため保健室に行くね」


ドクンと、心臓が嫌な音を立てる。

幸せだった気持ちが泡のように消え、一瞬にして不安に襲われた。


「……あ、そっか…」


声が震える。

神田くんと華さんの関係は切っても切れないのだと。


「そこで確かめたいことがあるんだ。それで白野さんにも聞いてほしい話があるから、今日の放課後って時間空いてる?」

「放課後…?」


もしかしたら私に気を遣って、そう言ってくれているんじゃないかと思い、小さく首を横に振る。


「私に気を遣わなくていいよ」

「ううん、気を遣ってるわけじゃないんだ。ちゃんと白野さんにも聞いてほしいことだから」

「でも、そんな話なんてあるの…?」
「そうだよ。何か嫌な予感がするから」


私の思う“嫌な予感”よりもずっと、神田くんが言ったほうが危険度がぐっと増す。

神田くんは何に対してそう思っているのだろうか。


そんなこと考えてもわかるはずなんてなく、結局放課後になるまで待つしかなかった。

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