闇に溺れた天使にキスを。






一度来たことのある場所で。
前回同様、神田くんの前に座らされる私。


ここは神田くんが“佐久間”として生き、暴走族の仲間が集まる廃工場の地下だった。



隣には涼雅くんもソファに座っている。


「……で?華はどうだったんだ?」


今日は予告もなしに来たようで、周りのみんながふたりを見て驚いていた。


「んー、特に変わったことはなかった」


涼雅くんが宮橋先生の名前を出して質問し、神田くんがそれに答える。

けれどふたりの会話を理解できない私は、先ほどから神田くんにただ頭を撫でられていた。


「じゃあいったい何してんだよあいつ。
ここ数週間、ずっと隠れてどっか行ってるぞ」


身を投げ出すようにしてソファにもたれ、両手を頭の後ろで組む涼雅くんは面倒くさそうな顔をしていて。


「おかしいよね…仲間に追わせても、うまい具合に撒かれるみたいだし」



神田くんも真剣に話しており、只事じゃないのだと理解できた。



「でも今のところ、白野は何もされてねぇんだよな?」

「え……私?」
「そもそも華と接触したか?」


宮橋先生とは初めて神田くんの家に行った日を最後に会っていないため、首を横に振る。



「だってよ。なら白野狙いではないんだよな。
まああいつ自身、謝りたいって言ってたし」


面倒くさそうにしていた涼雅くんが、今度は『めんどくせぇな』と口に出した。


「……いや、それはわからない」


するとその時、私の頭を撫でる神田くんの手の動きが止まった。

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