闇に溺れた天使にキスを。
「だ、大丈夫です…」
少し心が揺らいでしまったのは秘密。
神田くんとずっと一緒にいられたら、幸せだろうなって思ったから。
けれど心臓もまたもたない気がするし、迷惑かもしれないと思うと断るしかなかった。
「あ、悲しい。断られた」
絶対悲しいと思っていないくせに、そんなこと言って。
今の神田くんはきっと余裕っぽく笑っているんだろうなということが容易に想像できた。
「本気じゃないくせに」
「こら、そんな怒らない。
俺は本気のつもりで言ったよ」
「嘘」
「本当だよ」
小さな笑みを漏らした神田くんが、私の頬を指で撫でる。
その動作で恥ずかしくなった私は、顔が熱くなるのを隠すようにして俯く。
そうでもしないと、周りの人たちみんなに照れているのがバレてしまうから。
「あー、うん、お前らこのふたり睨みつけていいぞ」
「……っ」
けれど私たちのやりとりは、しっかりと周りの人たちにも見られていたようで。
また涼雅くんに呆れられてしまった。
「あーあ、せっかく白野さんをそばに置いておけるチャンスだったのに」
「何がチャンスだ、そういうことはふたりでやれって」
最終的には神田くんにも呆れる涼雅くん。
「だって、白野さん。涼雅に怒られちゃったよ。
今からふたりきりになる?」
「え…と」
「バカか。佐久間そろそろ行かないといけねぇ時間だろ」
神田くんの質問に戸惑っていると、涼雅くんがすぐさま口を挟んできて。
どうやら神田くんは今日も予定があるらしい。
もしかして組関係のことだろうか。