闇に溺れた天使にキスを。
トイレのドアをノックしても反応はなく、開けても中に誰もいない。
部屋の隅から隅まで探しても涼雅くんの姿はなく、途端に不安が私を襲った。
「……っ、どうして…」
せっかく泣き止んだのに。
涼雅くんが優しく声をかけてくれたから、そばにいてくれたから、自分が壊れずに済んだのに。
涼雅くんにも捨てられたんだと思うと、目から涙溢れてしまう。
今日はもう泣きすぎだと自分でもわかっているけれど、涙は止まってくれない。
体の中にある水分がすべて涙になるんじゃないかというほどの勢いだ。
「……うう」
結局その場でしゃがみ込み、うずくまる。
ひとり取り残された部屋は寂しくて、もうどうしたらいいのかわからなくなっていると───
ガチャッと、部屋の鍵が開く音がして。
「……っ、悪い!やっぱもう上がってたか」
外から入ってきたのは、先ほどよりもずぶ濡れ状態な気がする涼雅くんの姿で。
「りょ、がく……」
銀色の髪も、今は濡れて色が薄くなっているように見えた。
「本当運ねぇよな、一通り買い終わってからまた雨降り出すとか」
前髪をかきあげる涼雅くんに色気を感じ、思わず見惚れてしまう。
「コンビニで傘も買ってこれば良かったな」
「コンビニ、行ってたの…?」
「ああ、コンビニとどっかの服屋」
「服……」
「こんな濡れた制服とか着るのは難しいだろ。だから服一式と、あとは飯だな。腹は減るだろうから」
そう言って、涼雅くんはテーブルに濡れている袋を置いた。
「まあ中の服とかは濡れてねぇだろうから大丈夫だろ……って、お前いつまで泣いてんだ」
「だって…」
私に呆れて見捨てられたと思ったから。