闇に溺れた天使にキスを。



そこにはふたりじゃ食べきれないほどのパンやおにぎり、それだけでなくお菓子まで用意されていて。


「こんなにたくさん…」


確かに袋が大きい気がしたけれど、こんなにも量があったとは思わなかった。


「あっ、お金…」

慌ててお金を返そうと思ったけれど、肝心の鞄がなくて。


「お前、病室に忘れてきたろ」
「……本当だ」


勢いのままに飛び出したから、鞄ごと病室に忘れてしまったのだ。



「ごめんね、後日必ず返すから」
「こんくらいで金なんていらねぇよ」

「でも服まで…」

「感謝してんならいっぱい食べて、たくさん寝ろ。
それ以外は受け付けねぇ」



冗談ではなく、真剣に私を見つめながらそう言った涼雅くん。


「……涼雅く…」


その優しさが今の私には心地よくて。
また涙が出そうになった。


「いつにも増して泣き虫だな」
「これは嬉しくてっ……」

「嬉しくて泣くとか変なやつ」
「……っ、だって」


もし涼雅くんが助けてくれなかったら、私の命はどうなっていたかわからない。

それから涼雅くんがあの雨の中、私を追いかけてきてくれなかったら───



今もまだひとり寂しく、押し潰されそうになりながら彷徨っていたかもしれないのだ。


「仕方ねぇな。今日だけだぞ」
「え……」


その時、涼雅くんが私の肩に手をまわしたかと思うと。

まるで壊れ物を扱うかのように、優しくそっと抱き寄せてくれた。


途端に近くなるふたりの距離。



「今日だけ優しくしてやる」
「今日…」

「なんか文句あんのか」
「ううん、涼雅くんはいつも優しいのにって思ったの」


ただ少し、不器用なところはあるかもしれないけれど。


それ以前に意地悪さが勝っているのかもしれない。

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