闇に溺れた天使にキスを。
*
あれから休み時間ごとに、沙月ちゃん以外の女の子にも質問されたのだが、沙月ちゃんが協力してくれてなんとか誤解を解くことに成功した。
けれど問題は他クラスの人たちにも誤解が広まってしまったことだ。
それほどに神田くんは有名のようで。
「ごめんね、職員室についてきてもらって」
「ううん、大丈夫だよ」
そして今はお昼休み。
ご飯が食べる前に、今日は沙月ちゃんが日直のため日誌を職員室まで取りにきたのだ。
「…あれ、未央見て。
あれって神田じゃない?」
職員室に行くため一階の廊下を通っている時、保健室に入ろうとする神田くんの姿が見えた。
「ほんとだ…」
どうしたんだろう。
今日の様子を見る限り、神田くんはいつも通りだったのだけれど───
その時、思い出した。
電車の中でほんの一瞬、彼が苦しそうに顔を歪めていたことを。