闇に溺れた天使にキスを。



「行かなくていいの?」

ふと沙月ちゃんにそう声をかけられ、はっと我に返る。


「うん…!行っても困るだけだろうし…」

「そうかなぁ、私だったら心配されて嬉しいけどな。
それもこんなかわいい天使に」


神田くんもだけれど、沙月ちゃんもよく私にかわいいと言う。

かわいい要素なんてないというのに。
ただ鈍くさくて、おどおどする女なだけ。


自分で思いながら落ち込みつつ、頭の中では神田くんのことでいっぱいになる私。

その気持ちを抑え、沙月ちゃんと日誌を取りに行ったけれど───


気になってしまう。

あの苦しそうに歪めていた表情を思い出してしまえば、不安になるのだ。


「やっぱり、行かないの?」

もう一度、沙月ちゃんに声をかけられる。
きっと私が悩んでいることに気づいたのだろう。

行きやすいような雰囲気にしてくれたのだ。

< 54 / 530 >

この作品をシェア

pagetop