闇に溺れた天使にキスを。



「……それは秘密だよ」

もちろん断ってくれると思っていたけれど、なんと神田くんは言葉を濁してしまった。


「その言い方、モロバレじゃん!
この際公表しろよー!」


慌てて私が否定しようとしたその時、彼はニヤニヤと笑いながらが神田くんの背中に勢いよく手を回した。

その瞬間、保健室で見た傷のことが真っ先に思い出されて。


「……っ、ダメ!」

ガタンと音を立てて立ち上がり、私は彼の手を急いで神田くんから引き剥がした。


「か、神田くんに触っちゃダメ……!」

言ってから後悔した。

神田くんの濁した話し方からの、私のこの言葉。
さらに誤解が深まるだけ。


それに私の独占欲が強い、と捉えられるだろう。

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