インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
こんなことがなければ私たちは今まで通りの幼馴染みだったと思う。

尚史には悪いけど、しばらくの間は乗り掛かった舟だと思って我慢してもらおう。

電車が減速して止まり、ドアが開いた。

ターゲットのカップルはまた腕を組んで電車を降りようとしている。

「あ……ここで降りるみたいだな。俺たちも行こう」

尚史は私の手をしっかり握りしめ、ターゲットの後を追う。

ちょっと待って、いきなり……?

さっき私のペースに任せるって言わなかったっけ?!

私はいきなり手を思いっきり握られたことに動揺しながら、尚史に引きずられるようにして歩く。

改札口で乗り越し精算をするときになってようやく私の手をがっちりと掴んでいることに気付いた尚史は、ばつが悪そうな顔をして手を離した。

「悪い……あわててたもんで、つい……」

「うん……大丈夫、わかってるから」

ちょっとギクシャクしながら乗り越し精算を済ませ、次のターゲットを探して辺りを見回した。

よく晴れた土曜日のお昼時とあって、駅構内はスーツ姿の人の多い平日の通勤時間帯とはまったく違う。

< 119 / 732 >

この作品をシェア

pagetop