インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
普段は会社と家を往復するとき以外はあまり電車に乗らない私には、鮮やかな色の服装で楽しそうに歩く人たちで溢れる駅はとても新鮮だ。

部活動の試合にでも行くのか、おそろいのジャージを着た学生らしき団体が点呼を取っている姿も見られた。

尚史は私たちと同じくらいの年頃と見られるカップルを控えめに指差した。

「次のターゲット、あのカップルでどう?」

「了解」

ターゲットに選んだカップルは、手を繋いだり腕を組んだりせずに並んで歩いている。

これはもしかして、尚史なりに気を遣ってくれているんだろうか。

私たちも同じようにカップルの少し後ろを歩いた。

ターゲットを見失わないように尚史が歩く速度を少し上げて私との距離が離れたとき、ジャージ姿の男子学生の群れが動き出し、私と尚史の間に入り込むような形になった。

高校生くらいだろうか、運動部らしい背の高い男子たちが並ぶと壁のようだ。

尚史はジャージ姿の男子学生たちの波に飲み込まれた私には気付かず、どんどん前を向いて歩いていく。

まずい、このままじゃ尚史とはぐれてしまう。

急いで尚史を追いかけようとしたけれど、私はジャージの群れに囲まれ、行く手を阻まれて身動きが取れない。

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