インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「だから無理して予約までしなくても、ドレス見たり話聞いたりするだけでいいじゃん。普通、式場っていくつか下見して一番いいとこ選ぶんだろ?」

なるほど、昨日言っていたように、結婚を考えているカップルを装って下見をすると、そういうことだな。

「じゃあ……もし店員が強引に予約させようとしたら、尚史がうまいこと言って断ってね」

「任せとけ。モモ、俺たちは今から、近々結婚する予定のカップルだ。お得なプランとか結婚式に掛かる費用とか、準備に掛かる期間とか、とにかくいろいろ店員から聞き出す。いいな?」

「御意」

私たちはガッシリと手を繋ぎ、幸せいっぱいのカップルになりきってブライダルサロンに足を踏み入れた。

店内は優雅なクラシック音楽が流れ、どことなく品のあるブライダルアドバイザーたちがにこやかに笑いながら接客をしている。

そこにいるカップルの誰もが幸せそうに微笑んで、店内に漂う空気さえもが清らかに感じられた。

おおぅ……これはまさしくヲタクの私たちにとっては未知の世界だ。

「いらっしゃいませ」

店に入るなり店員に恭しく頭を下げられて、冷やかしの私は申し訳ない気持ちで土下座したくなる。

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