インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「お客様、本日ご予約は……」

「いえ、初めてです。式場選びの真っ最中でして、ちょっと見させてもらってもいいですか?」

「さようでございますか。挙式プランなどの資料もこちらにございますので、ごゆっくりとご覧ください」

驚いたことに尚史は店員に動じる様子もなく、しれっとした顔で受け答えしている。

緊張し過ぎて、尚史と店員の会話が私の耳をすり抜けていく。

まさか尚史がこんなに堂々と嘘をつけるとは思ってもみなかった。

「モモ、披露宴会場で使うテーブルとか花とかの見本が奥の部屋にあるってさ。料理とか引き出物のカタログもここにあるって。そっちでドレスの試着もできるみたいだぞ」

「わー……すごーい……」

新婦役の私より、偽新郎の尚史の方がウキウキしているように見えるのは気のせいだろうか。

サロンに展示してあるテーブルセットや式場のパネルを見て回り、衣装のコーナーに差し掛かると、店員に試着を勧められた。

本当に挙式するわけでもないのに試着なんかしても本当に良いのだろうかとうろたえ、尚史に助けを求める。

「尚史……どうしよう、試着だって」

「ん?せっかくだからしてみれば?」

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