インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「えっ?でも……」

「式では1着しか着られないんだし、いろいろ着させてもらって決めればいいじゃん。俺も見てみたいし」

なんだ、そのデレた台詞は?

本当は私のウエディングドレス姿なんかには興味ないだろうに、結婚以前に付き合うのも面倒だとか言っていたわりにはやけに楽しそうだな。

私がためらうのをよそに、尚史は私を衣装の並ぶ場所へと引きずり込む。

どうやら尚史はすっかり新郎になりきって、このシチュエーションを楽しんでいるようだ。

「ほら、これなんか似合うんじゃないか」

デジャヴ……?

本日2度目の尚史のお見立てに、私はひきつった笑みを浮かべた。

「こちらは新作でして、とても人気のドレスなんですよ。よろしかったらこちらでご試着なさってみませんか」

再び店員に試着を勧められると、尚史は勝手に「お願いします」と返事をした。

ここまで来たら引き下がることもできない。

開き直るしかなさそうだ。

それから私は試着室に連れて行かれ、サロンのスタッフになされるがまま、あれよあれよと言う間にウエディングドレスを着せられた。

鏡の中の私は肩や胸元を露にした裾の長い真っ白なドレスを纏って、ガチガチに顔を強ばらせている。

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