インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
私が試着室から出て二人そろうや否や、スタッフが食い気味に「ぜひあちらで婚礼プランなどもご覧になってください」と迫ってきた。

尚史は顔色ひとつ変えることなく快諾した。

商談用と見られる応接セットの並ぶスペースに案内されると、飲み物はコーヒー、紅茶、緑茶のどれがいいかと尋ねられ、コーヒーをお願いした。

そこでスタッフが若くて綺麗なお姉さんに代わり、結婚式の形式や人気のブライダルプランなどの話を聞いた。

尚史は大真面目な顔をして真剣に話に耳を傾け、一般的なサラリーマンの挙式披露宴の規模や予算、準備に掛かる期間などを積極的に尋ねた。

「いかがですか?この機会にぜひ挙式のご予約を……」

サロンスタッフがニッコリと笑ってそう言うと、尚史は軽くうなずいて笑い返した。

「そうですね。見てみたい式場が他にもありますし、一生に一度の大事なことなので二人でゆっくり検討してみます。いろいろ詳しく聞かせていただいてありがとうございました。僕たち、このあと予定があるのでそろそろ……」

「さようでございますか。またのお越しをお待ちしております」

スタッフたちに見送られてサロンを出た私たちは、手を繋いでニコニコ笑いながらエスカレーターで下の階に下りた。

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