インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
エスカレーターを降りて数メートル先にあるベンチの前で立ち止まり、一気に脱力して倒れ込むようにベンチに腰を下ろす。

「はあぁ……疲れたぁ……。慣れないことはするもんじゃないね」

「それな。とりあえずどっかでコーヒーでも飲んで休憩しよう」

「コーヒーならさっきサロンで飲んだとこでしょ?」

「緊張して味なんかわからなかった。だからゆっくり味わって飲みたい」

「それな」

私たちはベンチから立ち上がり、すぐ近くにあったカフェに入っていくカップルのあとを追った。

カフェに入りターゲットのカップルと同じケーキセットを注文して、コーヒーを飲んでようやくホッとする。

「緊張してかなり疲れたけど……いろいろ話が聞けて良かったな」

「緊張してたの?あれで?」

「するっつーの。俺だってあんなとこ行ったの初めてだし、向こうはこっちが結婚すること前提で話してくるからな。それらしく見えるように必死だった」

「私はガチガチだったけど、尚史は堂々としてたから、そんな風には見えなかったよ。ちょっと見直した」

「見直したって……。俺めっちゃ頑張ったんだから、もうちょっと誉めてもらってもいいんだけど?」

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