インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「難しいこと言うなぁ……。他のものにしてくれる?」

「イヤだ。それ以外は受け付けない」

「でもそれってなんのことだろう……?全然わからないんだけど。せめてヒントちょうだい」

「断る。モモがわからないなら、わからないでいいよ」

なんじゃそりゃ?

私自身がわからなければ、何もあげられないのに。

首をかしげ腕組みをして考えていると、尚史がため息をついた。

「はい、この話はこれでおしまい。それよりモモ、そのケーキ食べないなら俺が食うぞ」

「食べるけど……ひょっとしてこれも食べたいの?」

「うん、食べたい」

尚史ってそんなに甘いものが好きだったかな?

もしかしたらブライダルサロンで緊張しすぎて、体が糖分を欲してるのかも。

「じゃあ半分あげる」

「半分も要らないよ、少しでいい」

「そうなの?じゃあお好きなだけセルフでどうぞ」

私がケーキの乗ったお皿を差し出すと、尚史は首を横に振った。

「モモがやって」

「私が?しょうがないな」

甘いものが欲しいだけじゃなくて甘えたくなったのか、それとも一応遠慮しているんだろうか。

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