インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「ひっ、尚史……!」

「こうされたらモモは黙って目を閉じる」

「ええっ……」

目を閉じたらホントにキスするなんてことは……ないよね?

実際にはしないと言っていたし、私のいやがることはしないと最初に約束してくれたわけだし……。

「ほら、早く」

「う……うん……」

有無を言わさぬ圧力に負けておそるおそる目を閉じると、尚史の顔がゆっくりと近付いて来るのが気配でわかった。

私の身体中が小さく震え、心臓はバクバクと大きな音を立てて、膝の上で握りしめた手はじっとりと汗ばんでいる。

キス待ちの顔を尚史に見られているのだと思うと恥ずかしくてたまらない。

目を閉じたままじっとしていると、私の頬に何かが触れた。

すぐそばにある気配と頬に髪の毛があたる感触で、それが尚史の頬なのだとわかる。

「どう?なんとなくわかった?」

耳元で尚史が話しかけた。

その声が耳の奥に響いて体の芯がゾクゾクする。

「どうだろ……。緊張しすぎて……」

「じゃあ特訓だな。毎日しよう」

「えっ、これを毎日……?」

「これだけじゃないけどな」

尚史はいつもより低い声でそう言ったあと、私の頬に軽く頬ずりをして離れた。

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