インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
意図せず声が裏返り妙な返事をすると、尚史はおかしそうに笑みを浮かべながら私の頭を優しく撫でた。

「じゃあおやすみ。今日は疲れただろうから早く寝ろよ。あ、でももし眠れなかったら電話して。モモが寝るまで隣で子守唄でも歌ってやるから」

そう言って尚史は私から手を離し、軽く右手を上げて帰っていった。

私はしばらくの間、ポカンと口を開けて尚史の後ろ姿を眺めていた。

なんじゃあれ……?

もはや別人やないか!

尚史と別れても私の心臓は相変わらず半鐘のようにせわしなく鳴り続けていて、血液は身体中の血管という血管をすごい速さで駆け巡り、体の奥から不思議な感覚が込み上げ、顔も体も汗がにじむほど熱く火照っていた。

大ダメージを受けて今にも倒れそうになりながら、フラフラした足取りで家の中に入った私は、リビングのソファーにドサリと倒れ込む。

一気に脱力──まさにそんな感じだ。

こんな調子で私は尚史との仮想カップル期間を無事に終えることができるのだろうか?

とにかく隙を見せてはいけない。

尚史は生身の大人の男なのだと肝に命じて、うっかり流されたりしないようにしなければ!

とりあえず……気が抜けたせいなのかなんだか体が重いけど、明日も朝から出掛けることだし、今夜はお風呂に入って汗を流したら、明日に備えて早いとこ寝てしまおう。


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