インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「ないけど……調査と言うか……」

早く結婚するために男性への苦手意識を克服しようと尚史と仮想カップルになっていることは、さすがに母には言いづらい。

適当に言葉を濁すと母は怪訝な顔をしながら私にタオルを差し出した。

「調査って、なんの調査?」

「あー……うーん……人気のデートスポット?とか、カップルに人気の店?とか……」

「へぇ……。もしかして……あんたまだあきらめてないの?結婚は一時のことじゃないんだからね?そんなに甘いもんじゃないのよ」

「だって……」

口ごもりながら額に浮いた汗をタオルで拭うと、母は救急箱から取り出した冷却シートを私の額に貼り付けた。

「この熱はおそらくあれね、慣れないことするから」

「あれ?」

「知恵熱でしょ」

「知恵熱……」

まさかこの歳になって知恵熱を出すとは!

そういえば……学校の保健の授業で子どもがどうやってできるかを知ったときや、高学年になって同級生の女子の会話についていけなくなったときにも、突発的に高熱を出したことがあったっけ。

……ということは、もしかしてこの熱は、突然大人の男になった尚史の言動の数々が原因なのでは……?

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