インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
尚史がいることにも気付かずに、寝顔どころか無防備な寝姿をさらしていたことが無性に恥ずかしい。

「一応念のために聞いておくけど……私が寝てる間に変なことしてないよね?」

「バカ、病人相手にするわけないだろ」

今の言い方だと『元気ならするよ!』と言っているみたいだ。

以前はそんなこと疑いもしなかったけれど、今の尚史は何をするかわからない。

このままここにいてもらっても本当に大丈夫なんだろうか。

「俺も昨日はちょっと無理させたかなって思ってたし、そのお詫びに今日は看病する。ゆっくり休めばすぐに良くなるって。知恵熱だろ?」

尚史は笑いながら私の頭をグリグリ撫でた。

いい歳して知恵熱を出して寝込んでいることを子どもだとバカにされたようで悔しくて、尚史の手を振り払おうとした。

だけど熱のせいで私の手はうまく力が入らず、頭を撫でているのとは反対の方の尚史の手に易々と捕らえられてしまう。

「無理するな、知恵熱なんだから」

尚史の大きな手で手を握られ、小さな子どもにそうするようにまた何度も頭を撫でられた私は、ムッとしてそっぽを向いた。

「うるさい、知恵熱って言うな」

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