インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「何それ……。尚史のそういうとこがわかんない」

「わからなくてもいいよ。それよりほら、早く口開けろ。アイスが溶ける」

あごをつかまれスプーンで口をこじ開けられて、半ば強引にアイスを食べさせられた。

うーん……アイスは美味しいけど、色気もへったくれもないな。

いや、看病されているわけだし、アイスを食べるのに色気なんか必要ないんだけれど。

自分で食べられると何度言っても尚史はカップとスプーンを渡してはくれず、結局私は恥を忍んで最後の一口までアイスを尚史に食べさせてもらった。

雛鳥にでもなったような恥ずかしさも、大好きなお高いアイスの誘惑には勝てないということだ。

親鳥の真似事がよほど楽しかったのか、尚史はなぜか満足げな顔をしている。

「美味しかった、ごちそうさま」

「どういたしまして。食欲があるなら他にも何か食べるもの用意するけど」

「今はいい」

「そうか。食べたくなったらいつでも言えよ」

尚史は空になったアイスのカップやスプーンをテーブルに置いて、私の額で熱を吸収して生温かくなったシートをゆっくりと剥がし、ベッドのそばに置いてあった救急箱から新しい冷却シートを取り出してペタリと貼り付けた。

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