インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
尚史はクッションをどけて、また私の体を両腕で支えゆっくりとベッドに横にならせた。

意図せず尚史と触れ合っていることや、尚史の顔がすぐ近くにあることをいちいち意識してしまう。

もしかしてこれも特訓のうちに入ってる?

元気なときでも私には刺激が強いのに、体が弱っているときに優しくされると破壊力は倍増で、『私と尚史はこれが当たり前』なんて言うような妙な錯覚を起こしてしまいそうだ。

やっぱり無理やりにでも帰ってもらおうかなと思ったり、それでも一人では心細いなとか、ここにいてもらえると心強いなとも思ったりする。

ぼんやり天井を眺めてどうしようか考えていると、尚史は私の顔を見ながら笑みを浮かべてそっと頭を撫でた。

その顔や手があまりにも優しかったから、心地よくてこのままずっとそうしていて欲しいような気がした。

「そう言えば昔さ……俺が病気して学校休んだら、モモが連絡帳とかプリント持って来てくれたの、覚えてる?」

「うん、そんな頃もあったねぇ」

子どもの頃の尚史は小柄で体も弱く、しょっちゅう熱を出したり病気にかかったりして学校を休んだ。

そんなときの連絡係は私の役目で、学校帰りに尚史の家に連絡袋を持っていき、ほんの少しの時間だけど、尚史の顔を見てその日の学校での出来事を報告していた。

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