インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
かなり渋々ではあるけれど、尚史も同僚に根負けして参加することになったようだ。

視力の悪い尚史は席に近づいてきてようやく私がいることに気付いた。

声には出さなくても、尚史が「なんでモモがここにいんの?」と思っていることは、その表情でなんとなくわかる。

みんなの前で幼馴染みだとか説明すると場がシラケるかと思い、私はポケットからスマホを出してすばやく入力したメッセージを尚史に送った。

【私も面子が足りないからどうしてもって後輩に拝み倒されて連れて来られた。私たちが幼馴染みってことは一応ここでは伏せておく方向で】

トークの通知音に気付いた尚史が胸ポケットからスマホを取り出し、メッセージを確認して首をかしげた。

そして一瞬で返信が届く。

【なんで?】

なんで?って……他の人はせっかく楽しみにして来ているのに、尚史は私がいたら絶対に私としか話さないだろうし、そうなると他の女の子とは目も合わせないのが目に見えているからだ。

【なんでも。大人なんだから空気読め】

私がそう返すと、尚史は眉間にシワを寄せてさらに首をかしげながら席に着いた。

ああ、『拙者まったく解せん』という顔をしている。

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