インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
もしかして単純にワインを飲みすぎたせいで気持ち悪いだけかと思おうとしたけれど、過去の深酒の経験や男性との接触で起こった拒絶反応から考えると、込み上げる不快感が悪酔いしたせいではないことは明らかだった。

「今日ここに来てくれたってことは、この間の返事はOKってことでいいんだよね?」

いきなり強く抱き寄せられて、うまく力の入らない体ににじんだ冷たい汗が、静かに背中を伝い落ちた。

そのままソファーに押し倒され、さっきまで緊張と酔いで火照っていた顔から急激に血の気が引いて行く。

八坂さんは私が抵抗できないように私の両手を片手でしっかりとつかんでソファーに押し付け、私の足の上にまたがっている。

これではまったく身動きが取れない。

まな板の上の鯉って、こんな気持ちなのか?

それでも光子おばあちゃんの願いを叶えるためには我慢するしかないと自分に言い聞かせ、今すぐ八坂さんを突き飛ばして逃げ出したい衝動を無理やり抑え込んだ。

「好きだよ、モモちゃん。今夜はこのまま返したくないな」

八坂さんの顔が私の顔にゆっくり近付いて来て、観念して無理やり目を閉じようとしたとき、尚史の顔が脳裏をよぎった。

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