インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
尚史には余命わずかな光子おばあちゃんに対して嘘までつかせて、なんだか申し訳ない。

母はそんな私の気も知らず、相変わらず楽しそうに話し続ける。

「聞いてよ、洋子ちゃん。モモったらね、光子おばあちゃんを喜ばせるために結婚するって言って婚活始めたでしょ?それでいい感じだと思ってた人にフラれて結婚はあきらめるって言ってたのに、やっぱりあきらめきれないからまた婚活再開するって」

「だからフラれてはいないって!」

母は私の話を全然聞いていない。

フラれたんじゃなくて、むしろ私の方が無理だと思ったから拒否ったんだって言うのに!

だけどもう言い訳をする気力もない。

婚活再開の前に巨大な壁にぶち当たってしまったんだから。

「彼氏もいないし家事もろくにできないのに結婚なんて無理だって言ってるんだけどねぇ、この子ったら往生際が悪くて。尚史くん、申し訳ないけどモモを嫁にもらってやってくれない?」

母は悪びれもせず、笑いながらとんでもないことをのたまった。

私は口に入れたアップルパイをあやうく吹き出しそうになる。

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