インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
尚史からボールペンを受け取り、『妻になる人』の記入欄にペン先を下ろす。

婚姻届なんて、実物を見るのはもちろん初めてだから、緊張してボールペンを持つ手が震える。

なんとか記入を終えると、母と洋子ママが保証人の欄に記入し始めた。

こんなときだけやたら仕事が速い。

「モモは帰ってそれに判子押して。今日の晩にモモのお父さんに挨拶に行くから、明日は役所にこれ提出しに行こう。そんでそのあと新居探しだ」

「えっ、早くない?!」

「善は急げだ。今後のこと考えると早い方がいいだろ?何か問題でも?」

「ないけど……」

あまりにもトントン拍子に話が進みすぎて、その勢いに私自身がついていけない。

そんな私を置き去りにして、母と洋子ママは『花嫁衣装はやっぱりウエディングドレスがいいわね』とか『新婚旅行は海外かしら?』などと話している。

あれ……?

何か大事なことを忘れているような……?

それがなんなのかを思い出そうとしても、事態が急転したことで混乱して、うまく考えがまとまらない。

「それじゃあ今夜はうちでお祝いね!そうと決まればごちそうの準備をしなくちゃ!お父さんにも早く帰って来るように連絡しておくわ」

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