インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
それからしばらくして、案の定尚史が私の部屋にやって来た。

尚史はノックもせずにドアを開けて、ツカツカと私の方へ近付いてくる。

「モモ、さっきのどういう意味?俺、全然わからないんだけど」

相当急いで来たのか、尚史は息を上げながら私の肩を両手でガシッとつかんだ。

「いらないからいらないって言った」

「だからなんで?結婚指輪買おうって言ったのが、なんでそんなに気に入らない?」

尚史はなんにもわかっていない。

だけど私自身も、なぜこんなに腹が立つのかわからないけど、この苛立ちを抑えきれない。

「わかんないけど!しょうがないでしょ、ムカつくんだもん!」

「……俺のこと、そんなにムカつく?勝手に入籍したくせに夫ヅラすんなとか思ってる?」

悲しそうな顔をしてそう言った尚史を見ると、私の胸がズキンと痛んだ。

私はそんなことを思ってはいないし、尚史にこんな顔をさせたかったわけじゃない。

こんなつまらないことでケンカだってしたくないのに。

「違う……。そうじゃない……」

「だったらちゃんと理由を言ってくれないと、俺、どうしていいかわからないよ……」

尚史は私から手を離し、頭を抱えて床に座り込んだ。

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