インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
『ジュエリータキウチ』と店名が掲げられた店の前まで来ると、緊張して顔が強ばってきた。

店内ではとても上品そうな店員さんたちが、にこやかに笑って接客をしている。

これまでは尚史と買い物に行くと言えば、近所の古本とか、本屋とかゲームショップとかコンビニとか、とにかく色気もへったくれもない場所ばかりだったのに、いきなりこんな上品な店に入るのはハードルが高い。

「なんか……緊張するね」

「大丈夫だ、誰も取って食ったりしないから」

尚史は谷口さんとのジュエリーショップ巡りで慣れたのか、平然とした態度で私の手を引いて店内に足を踏み入れた。

私たちはマリッジリングが並べられたショーケースの前で立ち止まり、二人して中を覗き込む。

結婚指輪は両親が着けているようなシンプルなものばかりなんだと思っていたけど、可愛らしいものやカッコいいものまで、デザインは様々だ。

「わぁ……いろいろあるんだ。ほら、夫婦で別々のデザインの指輪もある」

「俺も親父たちがしてる指輪みたいに、銀色で飾りっ気がなくて、夫婦で同じデザインが当たり前だと思ってたけど、今は違うんだな」

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