インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「モモは負けず嫌いだし、一度言い出したら聞かないから。あの段階で俺が何言ったって、逆に意地でも誰かと結婚するって言いそうだと思って。実際に久美子さんが無理だからやめとけって言ったら、合コンに行って相手探したし」

「それでもしモモとその人がうまくいきそうだったら、尚史くんはどうしてたの?」

「そりゃあ全力で相手を潰して、略奪してたに決まってる」

あの無気力な顔の裏で、尚史はそんなことを考えていたのか!

もしかしてその略奪計画こそが、仮想カップル作戦だったのでは?

「なるほど、確かにそうね。モモはそういうとこあるわ。尚史くんはモモに実際に動かせて、現実の厳しさを思い知らせようとしてたのね」

「まぁ。モモが現実見て、やっぱり無理かもって思ったところで、『この際だから俺にしとけば』って言おうと思ってたけど、合コンで相手を見つけてきたのは想定外だった。だから全力で潰しにかかろうとしたら相手が自滅して、モモが勝手にあきらめた。そうかと思ったらまた婚活するって言い出して、おばあちゃんが勘違いして、おふくろと久美子さんがモモに俺を薦めたから、流れに乗って結婚した」

この一連の流れを聞いていると、私は最初から尚史の手のひらの上で転がされていたような気がしてきた。

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